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2006年03月12日
コラム 第十五回
CLベスト16で勝者と敗者を分けたもの
今シーズンの決勝トーナメント1回戦の傾向としては、テクニックで勝るチームが最終的に勝ち進んだ、といえるかもしれない。また、フィジカル的な要素だと、勝者にはスピードが際立っていた。もちろん、チームが纏まっていること、守るときにはしっかり守ること、これらは大前提である。しかし、逆にいうと、CLの決勝Tレベルでは、どこのチームでも団結してくるし、守備の意識も強くなるので、それだけではなかなか差が付きづらい。よって、個人が持つテクニックとスピードが最後に勝敗を分けるケースが随所に観られたのだった。あくまで傾向でしかないが、これは恐らく全ての試合に当てはまる。
バルセロナとチェルシーの試合は象徴的だった。僅かなスコアの差ではあったが、前者の攻撃陣だけが有するずば抜けたテクニックと抜群のスピードを後者は持ちえなかった。2試合を通してバルセロナがよく守ったので、チェルシーのスピーディーなカウンターは最後まで鳴りを潜めた。もちろん、チェルシーも相変わらず鉄壁ぶりを見せたが、それでもバルセロナの個が持つ技術と瞬発力は際立っていたといえる。
昨季覇者リバプールを破ったベンフィカや、スコットランドの雄レンジャーズをかわしたビジャレアルも同様である。彼らは共に、自分たちより大柄な相手を上回る技術面と持ち前のスピードを披露した。とりわけベンフィカの場合は、スコア的にも内容的にも、かなりお釣りがきたようである。
イタリア勢とドイツ勢が対戦した2試合も、体格で上回る後者にテクニックで勝る前者が競り勝ったといえなくもない。ミランとバイエルンの対戦では、バイエルンにとって不利なジャッジがあったにせよ、両者にスピードとテクニックの差があったことも確かであろう。とはいえ、何とか勝利を手にしたユベントスは、この議論の対象外かもしれないし、PSVを圧倒したリヨンは、あらゆる面で決定的な違いを見せたといったほうが正しい。(リヨンの武器がテクニックとスピードであることは言うまでもないが……)
まだ2ndレグは終わっていないインテルミラノとアヤックスはどうだろうか。今のところ優勢にあるのはアウェイで引き分けたインテルミラノだが、彼らもアヤックスの選手たちより技術的に高いものを持っているとはいえる。1stレグの終盤に、フィーゴが絶妙なキープから(後方から飛び出したカンビアッソへ)パスを出し、ボールを受けたカンビアッソが綺麗に折り返してクルスがネットを揺らした場面などは、テクニカルなサッカーそのものであった。
唯一、議論の余地があるのはアーセナルとレアル・マドリードである。こちらは両チーム共にテクニックに秀でた選手を多く有している。また、DFラインが安定していないという点でも似ている。しかし、この対戦ではまずアンリとロナウドの差が明確なポイントとなった。DFを2、3人引きずってもボールを失わずにドリブルを仕掛けては守備に戻り、2試合通して鬼のようなパフォーマンスを維持していた前者。一方、ボールを受けることさえままならず、最後まで“素晴らしいロナウド”を見せることができなかった後者。この差は大き過ぎる。
レアル・マドリードではジダンが中盤で獅子奮迅の働きをしていたが、皮肉にも元プレミアリーグの選手であるベッカム(彼は明らかに不調であった)やグラベセンは技術面で明らかにアーセナルの選手に劣っていた。彼らにはスピードもない。よって彼らがボールを持ったときに寄せられるとレアル・マドリードの攻撃は後ろを向かざるを得なくなる。攻撃が止まるのだ。
逆にレジェス、セスク、リュンベリ、フレブらはいずれもボール扱いが巧くスピードもあり、彼らがボールを持ったときは1対1で負けることが非常に少ない。トップにアンリがいることもあり、アーセナルの選手はボールを持てば必ずといっていいほど前線まで繋げることができていた。
レアル・マドリード側で気になったのは選手交代か。CL史上最多ゴール数を誇るラウールは、並外れた点取り屋であると同時に、優れた戦術眼を持ちチームプレーを体現することができる稀有なプレイヤーである。そんな彼を下げて、冴えないロナウドやベッカムを残した監督の判断は致命的だったように思う。(おそらくラウールが怪我明けだったからだと思われる)
また、追いかける状況で、ロビーニョ、カッサーノ、バティスタといった選手たちがベンチにいたにもかかわらず、なかなか彼らを投入しなかったというのも甚だ疑問である。しかし、これらはあくまでレアル・マドリード側から見れば、という話であり、アーセナル側から見れば単に勝つべくして勝ったということ。
確かにジダンやカシージャスは素晴らしいプレーをしたし、アーセナルが決定力を欠いていたことも否めないが、客観的に判断すれば、2試合を通してより優れたパフォーマンスを見せたチームが順当に勝ち残った、ということになる。イングランドのアーセナルは、テクニックでもスピードでも、スペインの名門レアル・マドリードを凌駕していたのだから。
投稿者 kitamura : 2006年03月12日 21:03
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